ポルトガル語の再帰動詞(verbos reflexivos)や代名動詞(verbos pronominais)で、つまづく人は結構多いです。日本語の動詞にない使われ方をするので頭を柔軟にして覚える必要があります。この記事では日本人にとってやっかいな再帰動詞と代名動詞をできるだけ簡単に解説します。
再帰動詞が全然分からないんですが。日本語にはないですよね?
確かにそうですね。再帰動詞は一言でいうと「自分自身に対する行為を表す動詞」です。それだけだとピンと来ないでしょうから詳しく説明しますね。
1、ポルトガル語の再帰動詞とは
再帰動詞とは再帰代名詞を伴う動詞のことで、自分、または自分たちに~する、といった意味を持ちます。英語の~selfに相当。つまり自分自身に何かをする、あるいは何かをした、というときに使います。
ポルトガル語では再帰動詞のことを、verbos reflexivosと言いますが、reflexivoという言葉自体に反射、反映の意味があるので言葉の通りですね。要するに自分自身に反射、反映する行為を指すのです。
では誰もが知っている初歩的なフレーズを例に出しましょう。
Como você se chama? あなたの名前はなんですか?(あなたは自分自身をどう呼びますか?)
Me chamo Natália. 私の名前はナタリアです。(私は自分自身をナタリアと呼びます)
気づいていない人もいるかもしれませんが、実はchamar-seは直訳すると「自分自身を呼ぶ」という意味になるのです。これこそが再帰動詞です。
2、ポルトガル語の再帰動詞は代名詞とセットで使う
ポルトガル語の再帰動詞は、通常再帰代名詞とセットで使います。
主語 | 代名詞 |
eu | me |
você | se |
ele/ela | se |
nós | nos |
vocês | se |
eles/elas | se |
再帰代名詞などと言っていますが、実際は人称代名詞目的格がその役割を果たしています。ポルトガル語では主語と同じ人称代名詞目的格を使うことで再帰代名詞となるのです。
この辺の文法用語はややこしいので特に覚えなくていいです。
動詞deitar-seの活用
主語 | 直説法現在 |
eu | deito-me/me deito |
você | deita-se/se deita |
ele/ela | deita-se/se deita |
nós | deitamo-nos/nos deitamos |
vocês | deitam-se/se deitam |
eles/elas | deitam-se/se deitam |
動詞ver-seの活用
主語 | 直説法現在 |
eu | vejo-me/me vejo |
você | vê-se/se vê |
ele/ela | vê-se/se vê |
nós | vemo-nos/nos vemos |
vocês | veem-se/se veem |
eles/elas | veem-se/se veem |
動詞vestir-seの活用
主語 | 直説法現在 |
eu | visto-me/me visto |
você | veste-se/se veste |
ele/ela | veste-se/se veste |
nós | vestimo-nos/nos vestimos |
vocês | vestem-se/se vestem |
eles/elas | vestem-se/se vestem |
基本的には動詞の通常の活用に「me」、「se」、「nos」を付け加えるだけです。代名詞が動詞の後に来るときだけ、主語「nós」の動詞の活用では語尾の「s」がなくなります。
deitamos>detamo-nos
vemos>vemo-nos
vestimos>vestimo-nos
再帰代名詞が動詞の前に来るときは通常の活用になります。
deitamos>nos deitamos
vemos>nos vemos
vestimos>nos vestimos
3、再帰代名詞は動詞の前か後か
前述の通り、再帰代名詞は主に動詞の前と後に来る2パターンあります。
1、Ele feriu-se com uma tesoura. 彼はハサミで怪我をしました(彼はハサミで自分自身を怪我させました)。
2、Ele se feriu com uma tesoura. 彼はハサミで怪我をしました(彼はハサミで自分自身を怪我させました)。
これら以外にも動詞の間に来るパターンもありますが、会話でほぼ使われないのでここではあえて省きます。
1、2では会話においては2のほうが好まれて使われるのがポイントです。代名詞は動詞の前にくるべきか、後ろに来るべきかについてはケースバイケースで、実は無数のルールがありますが、本題とも外れるので深くは触れないでおきます。
ここでは基本的には会話では再帰代名詞は動詞の前に来ると覚えておいてください。
あえて一つ代表的な例外を挙げるとすれば、肯定命令文は代名詞が動詞の後に来るほうが正しいといわれています。
1、 Olhe-se no espelho! 自分自身のことを鏡で見てよ。
2、Cuide-se bem! どうか身体に気を付けて。
ただ、これについても実際は会話ではSe olha!と言ったり、Se cuida! と言う人が多いです。
4、再帰動詞一覧
- ferir-se 自分自身を怪我させる
- cortar-se 自分自身を切る
- chamar-se 自分自身を呼ぶ
- esconder-se 自分自身を隠す
- pentear-se 自分自身の髪をとかす
- vestir-se 自分自身に服を着せる
- barbear-se 自分自身のひげをそる
- deitar-se 自分自身を横たわらせる
- olhar-se 自分自身を見る
- preocupar-se 自分自身を心配させる
もちろんこれが全てではありませんが、基本的には自分に対してできる行為を表す動詞は再帰動詞にすることができます。
逆にいうと、再帰動詞は対象を自分自身ではなく、ほかの人にすれば普通の動詞として使えるのもポイントです。
1、Ele se feriu com uma tesoura. 彼は彼自身をハサミで傷つけました。(再帰動詞)
2、Ele feriu a irmã mais nova com uma tesoura. 彼は彼の妹をハサミで傷つけました。
5、代名動詞と再帰動詞の違い
ポルトガル語には再帰動詞とは別に代名動詞と呼ばれる似た性質を持つ動詞が存在します。
例えば次のような動詞が代名動詞に当たります。
- suicidar-se
- zangar-se
- queixar-se
- arrepender-se
これらの動詞は再帰動詞のように主語に合わせて代名詞がつきますが、最大の違いはこれらには「自分自身に」という意味は含まれない、ということです。
1、Minha avó sempre se queixa de dor no joelho. 祖母はいつも膝が痛いと不平を言います。
2、Me zanguei com você, 私はあなたに怒りました。
3、Meu amigo se suicidou. 私の友達は自殺しました。
1は、代名詞seが付いていますが、「自分自身に不平を言う」という意味にはなりません。あくまでもほかの人に不満を言っているのです。
2は、代名詞meが付いていますが、「自分自身を怒らせた」という意味にはなりません。「あなた」に対して怒っています。
3は、一見「自分自身を殺す」と訳すこともできそうですが、それはあくまでも翻訳で、「自分自身を自殺させた」という意味にはなりません。
例えばsuicidar alguém(誰かを自殺させる)とは言えないため、再帰動詞にはなりえないのです。
このように「自分自身」といった意味を含まないにも関わらず、代名詞が伴う動詞のことを代名動詞といいます。
6、代名詞を付ける代名動詞と付けない代名動詞
代名動詞の中には、代名詞をつけないと意味を成さないものと、代名詞をつけなくても通じるものがあります。
例えば前述した代名動詞は代名詞を付けることが義務づけられています。もし代名詞がないと意味が通じなくなります。こういった代名動詞をverbos pronominais essenciaisといいます。直訳すると「本質的代名動詞」という意味です。
- suicidar-se
- zangar-se
- queixar-se
- arrepender-se
一方で代名詞があってもなくても意味が通じるか、またはそれぞれ違った使い方になる代名動詞のことをverbos pronominais acidentais(非本質的代名動詞)といいます。
先生の中には再帰動詞もverbos pronominais acidentais(非本質的代名動詞)の一つだとしてカテゴライズする人もいますが、ここでは混乱を避けるために再帰動詞は省きます。
- sentar-se
- sentir-se
- levantar-se
- lembrar-se
- esquecer-se
1、Eu me sentei no sofá. 私はソファーに座りました。
2、Eu sentei no sofá. 私はソファーに座りました。
3、Não me lembro do que aconteceu ontem. 私は昨日何があったか覚えていません。
4、Não lembro o que aconteceu ontem. 私は昨日何があったか覚えていません。
1と2は代名詞があってもなくても同じ意味、同じ使い方ができます。
それに対し3と4は意味的には同じですが、3は前置詞を必要とするのに対し、4は必要としません。
これはlembrar-seが前置詞を必要とする間接他動詞で、lembrarが前置詞を必要としない直接他動詞だからです。このように代名詞があるかないかで使い方が変わったりもします。
とはいえ、毎度のことですが、多くのブラジル人は会話においてはこういった細かいルールは特に意に介しておらず、ほぼ感覚で代名詞を付けたり、付けなかったりするのが現実です。
人によっては、「Ele se suicidou」と言わずに「Ele suicidou」と義務的な代名詞までも省いてしまう人も少なくないです。
まとめ
以上、再帰動詞と代名動詞についてでした。
たくさんの文法用語が出てきましたが、本や参考書によっては別の名称が使われていることもあります。再帰動詞のことを再帰的代名動詞と言ったりすることもあるようです。
そうした文法用語は特に知らなくてもいいです。ブラジル人も代名動詞と再帰動詞の違いなんて普通は知りません。もっというとポルトガル語の先生でもごちゃごちゃにして教えちゃっている人も多いです。
なのでもしここで躓いている人がいたら、時間の無駄なので、だいたいのことだけ頭に入れて気にせず前に突き進みましょう。
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